TSR-2 Walk Around(1)

TSR-2(その1)


 「隠れた名機」「悲運の名機」「生まれる国を間違えた名機」いろいろな二つ名を持つ戦術機TSR-2です。
 実際のところは、「金がなかった」に尽きる話なんでしょうが、開発中止後10年以上経ってから再開発が検討されたぐらいですから、「機体自体は高性能だった」というのは間違いないようです。


TSR-2  XR-222   IWM Duxford 2012


 IWMダクスフォードに展示されているXR-222は試作4号機です。
 この機体は1965年6月初飛行の予定でしたが、65年4月に開発が中止されたため、未完成の状態でクランフィールト工科大学に払い下げられ、78年にダクスフォードへ移管、野外展示されていましたが2004から2005年にかけてレストアされ、こちらで展示されています。

 その他の機体は、唯一飛行したXR219の他、221・223が射爆場で処分、製産途中だった224~227は解体。XR220は65年4月6日、初飛行予定のまさにその日に開発が中止され(おそらく2号機の飛行実績を阻止するためだと言われています)、その後はコンコルド開発のための地上試験に利用された後、RAFヘンロウで教材として保管、75年にコスフォードの空軍博物館へ移され展示されています。



機種左側面

 ギチギチに押し込んで展示されているので、引いて全体を撮ることができません。


操縦席

 この近辺に受油プローブが設置されます。




戦術オペレータ席









機種右側面

 隣はTSR-2が戦略任務を引き継ぐことを期待されたバルカン、上は「TSR-1」キャンベラです。



首脚

 脚扉の影になっているリンクが首脚延長時用のリンクです。これで短距離離陸時に迎え角を大きく取るようになっています。




首脚柱




 TSR-2は、本来キャンベラ後継の戦術機として企画されましたが、当時のマクミラン政権がこの契約をインセンティブとして国内メーカーの集約を図ったこと、ブルーウォーター核ミサイル、ブルーウォーターの代替案としたアメリカのスカイボルトミサイル、双方の開発失敗から低空侵攻戦術機(キャンベラ代替)と長距離核攻撃(バルカン代替)の両任務を要求されるようになります。
 このTSR-2と超音速VTOL戦闘機P1154、STOL輸送機AW681が1960年台のイギリス軍用機産業の主要プロジェクトとなります。

 未だにこの3種類のジャンルの機体は数えるほどしかない訳で。半世紀前にこれらを実現するには膨大な費用が必要で、開発成功のためには生産機数の確保が大前提でした。つまり英国内だけではとても開発費用は賄えず、英連邦・ヨーロッパなどへ大々的に輸出することが絶対必要だったのです。





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